• 監督:モルテン・ティルドゥム
  • 製作国:アメリカ, イギリス/字幕
  • 日本での公開日:2015年03月13日
  • 鑑賞方法:映画館・劇場
  • 鑑賞場所:その他 横浜ブルク13
  • ジャンル:ヒューマンドラマ
  • おすすめ度:★★★☆
  • 個人的に好き度:★★★☆

陸奥新報 映画散策記事

 テレビドラマ「SHERLOCK(シャーロック)」でおなじみのベネディクト・カンバーバッチが、またまた卓越した演技力を発揮した。本作でカンバーバッチは、第2次大戦中、暗号解読に尽力したイギリスのアラン・チューリング博士を演じ、第87回アカデミー主演男優賞にノミネートされた。
 〝難攻不落の暗号機〟とされていたエニグマ(ドイツ軍使用暗号機)。暗号のパターン数は1垓5900京通りもあり、1日おきに設定が変更されてしまう。27歳でブレッチリー・パークの解読チームに抜擢されたチューリング博士は、機械での解読を発案。機械に毎日設定を自動解読させることで時間短縮を図ろうとするが―。
 チューリング博士は戦時中の功績もさることながら、コンピューター誕生の過程で重要な役割を果たした人物。終戦後に博士が考案した「イミテーション・ゲーム」、別名「チューリング・テスト」は、質問に対する答えによって人工知能であるか人間であるかを判定するもの。本作のタイトルにもなっている。
 だが彼には秘密があった。1952年に彼は逮捕されてしまい、英国政府が50年間エニグマ解読の真相を公表しなかったのもあって、正式な彼の復権は2013年までなされなかった。日本ではなじみがないだろう、とある法律によって彼は蹂躙されたのだ。
 チューリング博士の復権をメーンと捉えれば、非常に良い作品。しかし戦時中のシーンでは、もう少し緊張感を出しても良かっただろう。

2015年06月18日付 陸奥新報掲載 (船)

雑 記

27歳でブレッチリー・パークの解読チームに抜擢されたチューリング博士は、機械での解読を発案。機械に毎日設定を自動解読させることで時間短縮を図ろうとしたが、コンピュータが一般的でなかった時代であったため、彼の意見はすんなり受け入れられず。
しかも彼にはアスペルガー症候群の兆候もみられ、同僚との関係も上手く築けない状態。

そんな博士も、パブリックスクールの学生時代には、親友のクリストファー・モルコムに恋をしていた。クリストファーは若くして結核のため死亡。劇中で博士はエニグマ解読マシンを「クリストファー」と呼んでいる(ただし正式名称は“bombe”らしい)。
同性愛の傾向を隠しつつも、暗号解読を手伝うジョーン・クラークという女性に結婚を申し込むが、しばらくして自ら婚約を破棄。

マシンによるエニグマ解読は、検索機能を取り入れることで成功する。解読できていることを敵国に知られないよう情報管理が必要な状態になった(MI6も協力)。解読の功績によって多くの人命が救われたと言われている。

 

終戦後博士は、ケンブリッジ大学やマンチェスター大学にて研究を続けていた。
しかし1952年同性愛の罪で逮捕され、入獄か化学的去勢を強いられる。当時イギリスでは同性愛が違法とされていた。入獄を避けるため、彼は女性ホルモン注射の投与を受けることに。作中ではホルモンの副作用により、手の震えや思考能力の低下を示す博士の様子が描かれている。

1954年、チューリングは自宅で死亡。自殺とされた。齧りかけのリンゴがベットの脇に落ちており、青酸カリを塗ったリンゴを齧って自殺したという説もあるが、定かではない。

 

英国政府が50年間エニグマ解読の真相を機密としてきたのもあって、チューリング博士の正式な復権は2013年までなされなかった。エリザベス2世女王によって恩赦が発行されたが、チューリング博士を演じたベネディクト・カンバーバッチはこの件に関して非常に憤っている(雑誌『CUT 2015年1月号』参照のこと)。

確かにカンバーバッチの言うとおり、有罪にした挙句自殺にまで追い込んで、「はい許します」というのは勝手な話である。同性愛者というだけで偏見だけにとどまらず、社会的地位まで奪おうとするのだからたまったものでない。

2015年1月。英国俳優スティーヴン・フライがカンバーバッチらと共に、4万9千人の有罪とされたゲイ男性の恩赦を求める活動を開始したという。フライはチューリング博士を例にあげ、“gross indecency” law つまりはソドミー法によって名誉毀損された全ての人を恩赦するべきとした。